「紀州のドン・ファン」遺言書の有効性について判決が下りました
2024年6月21日 「紀州のドン・ファン」と呼ばれた男性の遺言書について、親族が無効を求めた裁判について、和歌山地裁は親族側の訴えを棄却しました。
紀州 ドン・ファン事件一連
紀州のドン・ファンこと野崎幸助さん(享年77歳)の事件を覚えている方も多いと思います。
事件当時は、マスコミを騒がせており「その後、どうなったのだろう」と思われている方もいると思います。
当時、妻だった被告が起訴されていますが、その裁判の期日は未定となっています。
もう一つ注目の判決 2024.6.21 遺言は有効か無効か?
「いごん 個人の全財産を田辺市にキフする」
野崎さんの経緯を遺言書を中心に整理します。
①2018年5月
野崎さんが亡くなる
②2018年8月
野崎さんの死後3ヶ月後の「遺言書」を長年の知人男性が預かっていたとして弁護士を通じて裁判所に提出された。そこには、赤い手書き文字で「いごん 個人の全財産を田辺市にキフする」と書かれており、日付は2013年2月8日だった
③2018年
遺贈を受ける田辺市職員が和歌山家裁田辺支部で遺言書を確認
④2019年3月
市議会で2020年予算に遺産を受け取るための弁護士委託料・土地、建物、絵画などの鑑定評価手数料を含めた関連予算を可決(約1億8,000万円)
⑤2020年4月18日
野崎さんの兄と、その子3名が発見された「遺言書」内容に疑問を持ち提訴
・野崎氏は、生前にミニチュアダックスフントの「イブちゃん」を可愛がっており、遺産は全て愛犬に贈ろうと考えていたという報道もあったが、そんな愛犬も2018年5月6日に急死した。
ちなみにペットへの相続はできませんが、負担付遺贈というのは可能です。
ペットへの相続 の準備をしましょう(2021.10.11)
「遺言書」の有効性をめぐる訴訟の主な争点と主張
本人の自筆とされる督促状の署名との同一性
①親族側:似すぎているので、透写の可能性がある。
②田辺市:類似しており、自署したものである。
公正証書遺言ではなく、自筆朱書遺言を選択
①親族側:少なくとも10億円を超える財産の全てを市に遺贈するという重要な
法律行為にも関わらず、紛失や破損の恐れがある自筆証書遺言を選ぶと考えにくい。
②田辺市:公正証書遺言では立会証人から漏洩するリスクがある。
田辺市に寄付する動機
①親族側:過去に寄付したことがあるが、全財産を遺贈する合理的な動機は見当たらない。
②田辺市:1990年までに合計1200万円を寄付しており、生前に寄付の意思も示していた。
また、生前の野崎さんは兄弟について知人に宛てた文書で「今は財産問題で、すごく
もめております。(中略)
財産を譲るつもりはまったく有りません」とし、兄弟に遺産を譲る意思はなかったと主張。
赤のサインペンで書かれた遺言書の体裁
①親族側:赤ペンは、従業員へのメモ書きに限られる。生前、野崎さんは遺言を「ゆいごん」と
話しており、「いごん」という言葉遣いは、不自然。
②田辺市:日常生活から赤を好んでおり不自然ではない。
ちなみに13億円は田辺市の予算全体の〇%
資産家である野崎さん。少なくとも13億円あったとされる資産は田辺市予算の約2~3%にあたる額だといわれています。
まとめ
今回のドン・ファン事案については、遺言をする者にとって「遺言書」を作成する時には揉める可能性のあるものは極力排除したほうがいいということではないでしょうか?
遺言書を残す場合は、自分にあった形式を選択することはもちろんですが、遺された相続人たちに想いを馳せてわかりやすく愛あるものにできるといいですね。
執筆:遠山 真由美(大阪市北区南森町)
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