2026年8月20日 国税庁の有識者会議にて非上場株式の算定方法を抜本的に見直す新ルール案がまとめられる
日本の中小企業オーナーにとって、大きな変革の時期に突入していくといっても過言ではない新ルール案がまとめられました。
国税庁が8月26日に開いた有識者会議で非上場株式の相続税評価に関する新ルール案を提示したためです。
非上場株式の評価方法が見直されるのは1964年以降、62年ぶりのことになります。
非上場の株式評価とは?
非上場の株式評価とういう言葉はあまり馴染みのないことかもしれません。
しかし日本の企業の9割以上は中小企業でありそのほとんどは非上場会社なのです。
オーナー経営者が亡くなった時や、株式を贈与したい時、その保有株式は財産として計上する必要があります。
上場株式なら市場価格という誰もが見える価格がありますが、非上場株式には市場価格が存在しません。
そのため国税庁は財産評価基本通達というルールを決め、株式の値段を計算する方法を定めていました。
この評価の骨格が大きく変わろうとしています。国税庁は2027年度の税制改正大綱に反映させ2028年1月以降の相続から新ルールを適用することを目指しています。
新ルールの試算式は「簿価純資産」・「5年間の収益力」が鍵
新ルールの計算式はシンプルです。日本経済新聞の説明によれば、計算には次の3要素で構成されています。
①企業の直前期末の簿価純資産
(帳簿上の純資産、つまり資産から負債を引いた金額)
②今後5年間で見込まれる収益力
(単年度の利益ではなく複数年の収益を加味)
③過大な課税を防ぐため、一定数の係数をかける
(現行ルールを参考に、この係数を0.7としている)
この①から③を使って評価する・・・
シンプルにすれば「帳簿上の純資産に5年分の利益をたして、0.7かける」という計算です。
係数は0.7として試算しているので、この係数は、まだ決まっていません。
そして一番の変更の革新となるのが、現行ルールの中心にあった「類似比準価格」が新ルールから消えていることです。
株式市場の価格と非上場株式の評価を切り離したことが大きな変化の一つだと思われます。
日本経済新聞による試算
日経新聞社では以下のような報道があります。
非上場株の相続評価をめぐる国税庁の新ルール案について、日本経済新聞は中堅税理士法人の協力を得て様々なケースで評価額の増減を試算した。新たな計算式では簿価純資産が大きいと相続税額も膨らむ傾向が明らかになった。
新ルール案の計算式は、企業の直前期末の簿価純資産に今後5年間で見込まれる収益力を考慮し、過大な課税を避けるために一定の係数を掛ける。試算では現行ルールなどを参考に係数を0.7とした。規模が異なる架空の法人を複数想定し、子ども1人が相続すると仮定して税額を算出した。
●想定会社① 製造卸売業
売上高105億円・利益2.3億円・簿価純資産56億円・資本金9億円・従業員158人
◎現行ルール
・株式評価額18億円 相続税額9億円
◎新ルール案
・株式評価額33億1000万円 相続税額17億3000万円●想定会社② 製造販売業
売上高56億円・利益3.1億円・簿価純資産29億円・資本金1.6億円・従業員91人
◎現行ルール
・株式評価額17億1000万円 相続税額8億4000万円
◎新ルール案
・株式評価額21億6000万円 相続税額10億9000万円●想定会社③ 工事業
売上高17億円・利益2900万・簿価純資産4.9億円・資本金4000万円・従業員8人
◎現行ルール
・株式評価額9,600万円 相続税額1100万円
◎新ルール案
・株式評価額3億400万円 相続税額9300万円
影響力大の簿価純資産
今回の試算を通して見えてくるのは簿価純資産の影響の大きさです。
簿価純資産とは帳簿にのっている資産から負債を引いた金額です。
歴史の長い会社程、帳簿上の純資産が積みあがっていきます。無借金経営を続けてきた会社・内部留保を厚くしてきた会社など日本の中小企業の多くが良い経営として実践してきた行動がそのまま評価の押し上げ要因に変わります。
オーナー経営者が今からできる準備
制度が確定していない今でもできる準備はあります。
①新ルールでのベースを把握すること。
多くの経営者が自社株の数字を知らないことが多いです。知らなければルール変更で増えるのか減るのか?もわかりません。どう変わるかは別にして、簿価純資産と直近5年間の利益の推移を確認してみてください。
②新ルール案のキャッチアップ
簿価純資産とされていますが、含み益・含み損など各社の状況は様々です。
どのように簿価純資産を計算するのか、また、係数についても、簿価純資産に5年間の利益を足し0.7かけるなど、となっていますが、どのような係数となるのか、など不明点がほとんどです。
2026年12月の税制改正に向けて情報収集をまめに行っていく必要があります。
③承継のシナリオを検討
ひょっとしたら今まで想定していた事業承継のシナリオがかわるかもしれません。
親族か・従業員か・第三者か?あらためて現状や必要資金を把握しておきましょう。
まとめ
今回は、非上場株式の評価ルールについてまとめました。
新ルール案では日本の中小企業を財務構造で選別し簿価純資産が多い会社程、株の評価額が高くなる。という点が大きな変更であり、その方向性は変わらないと考えられます。
今後の情報も収集しながら最善の策を考えて動くことが備えだと考えています。
参考)
2026年8月20日 日本経済新聞
非上場株の相続評価、国税庁が新ルール案提示 事業承継に懸念の意見も
非上場株の新評価ルール、売上高100億円の卸売業で相続税2倍 日経試算
執筆:遠山 真由美(大阪市北区南森町)
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