贈与は、相続税の節税対策として検討すべき、とても重要な方法です。
贈与をうまく使えば節税効果も高いのですが、贈与税と相続税 の関係を知らずに贈与していて失敗したというケースも多いです。
また、効果的であるがゆえに、税制を変更して、贈与して逃がしたはずなのに、相続税の課税でそれを取り込もうという動きもあります。
贈与税がかからない贈与
人から人に何かをあげる行為が贈与となりますが、贈与には贈与税がかかります。贈与税の税率は10%から55%(暦年贈与)となっていて、相続税にくらべると税率の上り幅が大きいことで知られていますね。(贈与税と相続税 どっちが得!?(2020/09/02))
確かに税率は高いのですが、贈与したら個人から個人に財産の所属が移るので、うまく使えば税金を抑える効果が生まれます。細かな要件などは別にしますが、以下の場合には贈与税がかからない贈与となります。
- 年110万円以下の暦年贈与
- 合計2500万円以下の相続時精算課税による贈与
- 教育資金贈与の非課税
- 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税
- 住宅取得資金の非課税
贈与税と相続税 が関係するケース
非課税などで贈与時に贈与税がかからなかった場合でも、以下のケースでは相続税の計算に関係する場合があるので注意が必要です!
1 相続から3年以内の暦年贈与(被相続人→相続人)
被相続人が相続人に贈与した財産のうち、相続から3年以内に贈与した財産は、相続財産に組み戻しされて相続税を計算されます。
なお、贈与時に贈与税を支払っていれば、その分は相続税から差し引かれます。
2 相続時精算課税による贈与
相続時精算課税制度を選択した贈与財産は、相続財産に組み戻しになり相続税を計算されます。
相続時精算課税制度を選択した後は、その被相続人からの贈与は全て精算課税制度の中での贈与になりますので、相続時にそもそも贈与税の申告漏れ・相続財産への足し戻し漏れが多く発生しています。
3 結婚・子育て資金の一括贈与を受けた残高
贈与をうけた残高がある場合には、これは相続財産に含まれることになります。
贈与税と相続税 が関係しないケース
逆に、うまく贈与しながら相続税もかからないというパターンもあります。
1 相続から3年以内でない暦年贈与
相続から3年以内の贈与は相続財産に戻入されますが、逆に3年前の贈与については相続財産に戻入されません。
税制改正では、この3年をもっと伸ばしたらいいのではないか(戻入が増えて税金が増える)という議論もされています。
2 相続人以外の者への暦年贈与(例:親→孫)
上記の通り、3年以内の被相続人から相続人への贈与は、相続財産への組み戻しになります。
逆に、それ以外の贈与については、組み戻し規定がありませんので、相続財産には組み戻しされることはありません。
3 住宅取得資金の贈与
今のところは、住宅を購入するための資金贈与の非課税は組み戻し対象ではありません。
4 教育資金贈与
ここは、令和3年3月31日までの贈与は組み戻しの対象ではなかったのですが、令和3年度の税制改正で、残高が残っている場合にはそれは相続財産に組み込まれてしまうということになりました。
なお、使い切れなかった残高について、受贈者が30歳をこえるまで口座に残高があった場合には、贈与税の対象になります。
このように、贈与すれば相続財産から外れる(かつ贈与税もかからない)という贈与については、今後の税制改正で課税強化の方向で動いているのは間違いありません。
まとめ
上記の通り、贈与税と相続税は入り組んでいますが、贈与の中には相続対策になるものが多く存在します。
ただし、せっかく贈与しても相続財産に戻入が必要なものがあることを知ったうえで実行することが重要です。
特に、時間をかければかけるほど、長期贈与は効果が大きくなります。
そのため、長期間の贈与は時間がある方にとっては、外せない相続対策です。
ただし、後に形だけの贈与だったということで、相続財産に戻入されないよう、形式・実態を整える必要があります。
市川税理士事務所でも、年末にかけて、今年の贈与税の暦年贈与枠を使った贈与税対策のお話がふえてきます。効果的な 相続の準備 にもなりますが、組み戻しなど思ってもみなかった結果とならないよう、相続に強い税理士の相続の準備ノウハウを是非活用してください。
執筆:税理士 市川欽一(大阪市北区南森町)
(制度は投稿時点のものになりますので、ご注意ください)
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