未成年者は相続の遺産分割協議には参加できません。
そして、未成年者の相続人と他の相続人が利益が対立する関係にある場合は、未成年者の代わりとなる特別代理人の選任手続きが必要です。
特別代理人の選任手続きはどのように行うのでしょうか?
特別代理人の選任の申立て
特別代理人の選定については、親権者により未成年者の相続人の住所地の家庭裁判所で申立てをします。
申立てから審査され認められるまでには1ヶ月から3ヶ月程度かかります。なお、申立てには次の資料が必要となります。
費用は特別代理人1名の申請に対するものです。
そのため3名の特別代理人が必要であれば費用は3倍となります。
特別代理人は誰でもなれるのか?
特別代理人については、特に資格も必要なく相続の当事者でなければ誰でもなることができます。
ただし特別代理人は未成年者の利益を保護するために選ばれるものなので、特別代理人としての職務を適切に行えることが必要です。
現状では、そのような特別代理人を裁判所が探すことが困難なため、親権者が推薦する特別代理人候補(ほとんどは親族)をそのまま選任するケースが多くなっています。
裁判所は、未成年者との関係や利害関係の有無等を考慮し、適格性を判断します。
遺産分割協議の内容に裁判所の許可が必要
特別代理人の選任手続きには、特別代理人申立書の提出と同時に遺産分割協議書(案)が必要です。
家庭裁判所は、特別代理人候補者が適任かどうか審査しますが候補者が適任かどうかは、どのような遺産分割を予定しているかを把握する必要があるためです。
仮に遺産分割協議書の内容が、未成年者にとって不利益な内容であった場合には、特別代理人の選任申立てが認められないこともあります。
家庭裁判所に認められる遺産分割協議書とは?
遺産分割の内容は未成年者の相続人にとって不利にならないよう配慮する必要があります。
分割の比率を考えると、可能であれば法定相続分を未成年者に与えることが理想です。
ただ、遺産の状況により必ずしも法定相続分で分割できない場合もあります。
例えば遺産が自宅だけの場合、子どもに分けるため自宅を売却して現金を渡すとなると、今後の生活がままならなくなります。他には、子どもの養育の資金は親が管理していくため、全て親権者が相続する方が良い場合もあります。
このような場合は、遺産分割協議書や特別代理人申立書に「子の養育と生活のため、便宜的に親権者へ遺産遺産を相続させる」などを明記することにより、未成年者の相続人にとって不利な分割協議ではない旨を示すことが大切です。
遺産分割協議書には、相続人全員が署名し印鑑登録した印鑑を押す必要があります。ただし未成年者が相続人の場合は、遺産分割協議には参加できませんので、相続人本人ではなく特別代理人が署名・押印をします。下記は未成年者がいる場合の遺産分割協議書です。
特別代理人の選任申立後の流れ
特別代理人の選任申立が受理され審査が完了すると、「特別代理人選任審判書」が送られてきます。これで無事に特別代理人が認められたことになります。この審判書と遺産分割協議書を合わせて、金融機関や法務局などに提出することで、未成年者の特別代理人の立場で協議に参加したことが証明され相続手続きを進めていくことができます。なお送付されるのは原本1通なので金融機関等提出する際はコピーなどで対応しましょう。
未成年が相続人にいる場合の相続手続きは専門家に相談を
相続人に未成年者がいて、かつ特別代理人の選任が必要な場合、通常の遺産分割協議と同時進行で家庭裁判所への手続きも必要となります。
親の立場であれば、お子さんの権利を守ることは当然の思いではあると思いますが、法律においては、未成年の相続人に対して公平性を図る必要が重要視されており、そのための煩雑な手続きが必要になってきます。
特別代理人を立てないことには遺産分割協議が認められず、相続税の申告が期限に間に合わなくなる恐れもあります。未成年者の相続人がいる場合は、相続の手続きに詳しい専門家へ早めに相談することをおすすめします。
まとめ
市川欽一税理士事務所では「相続の準備」「相続申告」を支援しています。相続や贈与など事前相談も承っていますので、いつでもお気軽にご連絡ください。お一人お一人の意向に沿った最善と思われる方法をご提案いたします。
執筆:遠山 真由美(大阪市北区南森町)
(制度は投稿時点のものになりますので、ご注意ください)
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